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かのう谷遡行

8/10~8/13 日之影川水系かのう谷遡行

参加者 シロクマ改、吉本、山本、木下

8/10 晴→雨

ほぼ徹夜明けでシロクマ氏と合流、一路宮崎へ向かう。初日は比叡山のショートルートでもと目論んでいたが、高千穂を過ぎるころからまさかの雨。仕方がないので、吉本氏と日之影の市街地で合流し、イギリス館なる旧鉱山の集会所跡を見学の後、入渓地付近にて幕営。程なくし熟睡。

8/11 曇天→時々雨 05:00起床→07:00入渓→20:00兜巾山山頂→01:00自動車道→01:30行動終了

03:00山本着。雨は依然として降り続いており、蒸し暑いテントの中は蚊がうなっている。寝付けないまま明け方となり、アベックラーメンの意外な美味さに感心の後出発。

入渓地は近く、碧の清水が流れる岩床は錫鉱石を含んでいるせいか紺色がかっており、水に映った木々の緑と溶け合って神秘的な渓相を作り出している。ちょくちょく出てくる滝も楽勝で、沢靴のフリクションも効いて楽しいばかりである。遡行図には中級とあり、この感じならば、昼過ぎには抜けられるだろうと楽観視していた。少なくともこの時点では…

程なくして25mの滝に着き木下リード。立ってはいるが、カムがよく効き登りやすい。直上すると滝の落ち口で止まっている流木にかぶられるので、ナイフブレードを打って右にトラバースして抜ける。見ると流木にガレが多数せき止められており、直上せずに正解だったと知る。そこから二股に分かれており、左のガレ沢から右の沢へ上手く関門の滝を巻いたところに降り立つことができ、さらに登ると滝つぼを配したゴルジュ滝が現れる。出だしはプロテクションが取れず嫌らしいが、流れの左端にカムが効くクラックがあり、そこをたどると、見事な流水溝が落ち口まで続いている。自然の造形に驚嘆しつつも、ペタペタと遠慮なく踏みつけてピッチを切る。

ここから沢は二手に分かれ、右のどうしようもない滑ダキの右端にある、どろどろのコンタクトラインを山本がリードするがとにかく悪い。さらに抜けた先のブッシュで先行した二人がスズメバチの群れにたかられている。フォローは途中でピッチを切り、先行組をさらに先にやるが、とうとう一人が首筋を刺されてしまう。聞くと、まず2,3匹にたかられ、ヘルメットに何か液体を掛けられてから群れで襲ってくるようになったという。

患部を水で冷やしさらに前進。一帯には鉱山の後であろうか岩盤に穴が穿ってあり、斜面に石を積み上げ平坦地があちこちに作ってある。ここまでの道のりを思うと、その昔によくぞと驚嘆するばかりである。

しばらく行くと馬蹄状の岩壁に阻まれるが、これはトポ通りに中央付近に右上するブッシュのバンドを強引に登ると抜けられる。程なくして30m位のスラブ滝に突き当る。はじめは左から巻こうと試みたが、どうもよくないので、これは滝の正面から越えてやろうと肚をくくる。滝の左端からトラバースして中央を走るクラックを狙うが、これまでの掛かりのいい岩とは一変してヌルヌルの腐った岩溝で、キャメの#3を決めて岩溝に沿って上がるがどうも悪く、何とかセットしたナッツがすぐに外れて流れてゆく。あれこれ試して#2がどうにかセットできたので、さらに上へ。ハーケンを打つも全く効かず、#1を苔を抜いた穴に入れ左のブッシュ際へ、細い木の根2か所をランナーにして、意を決して右の本流のほうへトラバースする。しかし悪い。スリップしたら間違いなくお陀仏だろうが、この手のクライミングもそう嫌いじゃない。左上に残置ハーケンを見つけ、若干ルートを修正し、更に悪くなった抜け口の3手を慎重にこなし落ち口を抜け思わず吠える。

この時点ですでに16時。後続はユマーリング+確保で続き、サード以降もバックロープで同様に上がってくる。そろそろ最後の100m岩壁かと期待したが、ザイルを出すか迷うような傾斜の場所が30分以上続き、さっきの悪壁で消耗したのかすっかりばて上がってしまい体が重い。いい加減うんざりしてきたところで谷のどん詰まり、100m岩壁に到達する。トポにはバンドを左上すると自然に抜けられるとあったが、バンドはほぼ水平に走っており、どこにも弱点がない。するとトポを見ていたシロクマ氏が「ここしかない」と、一見とても登れそうにない被ったブッシュラインを示す。次第に日も暮れ日没が迫ってくる。山本がほとんど器械体操状態で木登りをこなし、さらに1ピッチ左へトラバースするとうまい具合にどん詰まりの岩壁上に抜けることができ、さらに3ピッチザイルを伸ばすと、石楠花が群生する尾根にでる。いよいよ暗くなってきたので、ヘッテンを装着し、それこそ地図、コンパス、GPSを総動員し、猛烈なブッシュに押し返されそうになりながらも這い上がると、兜巾山山頂の標識にぶち当たる。この時点で20:00。もちろん真っ暗だが、幸い雨もやみ星が出てきた。ビバーク覚悟で獣道と大差ない登山道を恐る恐る下山する。しかし道が悪い。GPSで現在地はわかるのだが、肝心の地図が示す道がどこにもない。結局はテープに沿って下り、見失うと最後のテープまで引き返して再度テープを探し直すことを繰り返すが道は荒れており、渡渉のたびにテープを見失うので時間はどんどん過ぎてゆく。いつしか道は鉱山跡を辿り、途中岩盤に穿った坑道を通り抜けるが、鉱物が青白く発光しており、それこそラピュタのポム爺さんでも出てきそうである。採掘の影響か流れる川は赤茶けた色に変色し、そこら中に錆びた鉄管や、鉱夫達のものであろう弁当箱などが打ち捨てられている。半ば草に埋もれ、傾きあるいは倒れた墓石群を過ぎ、そろそろ嫌になってきたところで植林帯となり、さらに下ると唐突に車道へ降り立つ。それから痛む足を引きながら駐車場までの約30分を歩き01:30行動終了。行動時間18時間半。文句なしに今までで一番しんどい沢だった。

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