瑞牆山クライミング
- 8/12~8/14
- 2019年8月30日
- 読了時間: 4分
更新日:2020年12月4日
8/12
福岡はとにかく山まで遠くて不便であるがといってクライミングを諦める訳にもゆかず、今回は1,000キロを超える道のりを二人で運転して瑞牆山へ行くことにする。
そもそもの計画がしんどいのに加え、今回も山の神様から試されているのか出発日に仕事が立て込んで徹夜の上、7時間も遅れての出発となってしまう。それでもめげずに盆の帰省ラッシュをかわし、遮二無二運転して翌13日の午前10時ころ、遂に瑞牆山キャンプ場にたどり着く。

8/13 調和の幻想で墜落
さっそくギアを背負い目指す十一面岩末端壁へ向かうが、さすがにしんどい。ヨロヨロと歩いて1時間ほどで目指す「調和の幻想」の基部に着くが、ここでついに雨が降ってくる。もともと天気が悪くなるのは織り込み済みだったが、遠いとこから来たんだし今日一日くらいは晴れてくれよ、と勝手に憤慨しつつ、どうしたものかと思案するが雨も断続的だし登れるところまで行ってみようと、取りあえず「調和の幻想」に取り付く。
1ピッチ目はハンド~フィストサイズのクラック(5.10a)だが早速息が上がる。続くピッチは出だしを乗り込んで上を見ると水が流れていて苔が滑っている。乾いていそうな左方向へ大きく巻くがこれが失敗で、グラグラする古いハーケンでテンショントラバースして復旧する。濡れたクラックを強引にカムエイドすれば良かった。
3ピッチ目は乾いたカンテを伝って右方向。クラックから右に繋ぐのが若干難しい。4ピッチ目。完全な木登りからバンドに移り、大きく右へ。ここで風化した下向きのクラックに効いてないよなーと思いつつ#2を突っ込む。左へ戻りフレークを直上しようとするが、その上でフレークが消えている。どうしたもんかと一旦仕切りなおそうと下を向いたフレークに黄色のトーテムをセットしテンションをかけて一息ついたところ「カポン」と間の抜けた音を立ててカムが抜ける。しがみつこうとする間もなく、頭を下にして落ちてゆく。落ちながら「次のカム効いてっかな~」と思うが、変形したリングボルトと怪しい効き具合のカムでグランドすれすれで止まる。テラスに戻り、体を見るが両足首が痺れているが変な方向に曲がっている訳でもなく、ありがたいことにアキレス腱もついている。両手の掌がベロリと剥がれて血が出ているが大したことはなさそうだ。アドレナリンが効いているうちに降りた方がいいかとも思ったが、あと2ピッチだし、フォローならいけそうなので終了点まで抜けることにする。



皮肉にも今になって青空が出てきて、雨上がりの澄んだ空気に見事な景色が顕わになる。最後のピッチは大フレークからOW~高度感抜群のスラブとまさに自然がくれた巨大な芸術品だ。血でハンドジャムが滑るが上まで辿り着き同ルートを懸垂下降。痛む足を庇いながらヨチヨチ歩きで下山すると駐車場に山野井夫妻がいた。
思えば大学1年生の夏、劔で墜落して運ばれた病院の待合室で、半ば放心状態で眺めるテレビに映る彼の人の姿は衝撃的だった。「いや~あなたのおかげで未だに山に登ってて、しかも今日はこの様ですよ~(笑)」とか何でもいいから言葉を交わしたかった。
しかし我が身のドジさ加減にうんざりしてそんな気にもならず、すごすごとテン場代(3,000円)を払ってその日は早めに寝てしまう。
14日 アストロドーム
夜半に雨が降ったらしくテントはぐっしょり濡れている。どこに行こうか迷うが、昨日と同じ十一面岩末端壁のアストロドームならば濡れていないだろうと昨日と同じ道を辿る。たとえ登れなくとも、あの美しいルートを拝めるだけでも有難いと思いたい。
案の定、着く少し前から小雨が降りだすが、被っているおかげでルートは濡れていない。さっそく相方があっという間にムーヴを解決して、本気トライに向け整える。自分もトップロープで少し触るが、あちこち痛くて登るどころでなく早々に降参する。
いよいよ本気トライ、ビレイする自分にも相方の気迫が伝わってきて思わず緊張するが惜しいところでRPならず。気が付くと晴れ間が出てきて、青空に映える岩峰群が美しい。この素晴らしい一瞬を我が身に取り込もうと、思わず深呼吸を繰り返す。
残った気持ちを総動員してトップロープながら終了点までずり上がり、晴れやかな気持ちで下山する。


下山後台風10号が直撃コースであることが決定的となったので、予定を切り上げて、九州へ帰ることにする。帰りは完全に距離感が狂っており、300km程度ならばそう遠くないと感じてしまうようになる。