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2023/8/4~/8/6 大山 甲川遡行

【メンバー】K、キャノン、デナリ

【期間】8月4日~8月6日


「自分に同情するな。」それは頭でわかっていてもやっぱり行きたくない時は行きたくない。

どうやらU本さんは悪天を召喚することができるらしく、祝子川はキャンセル。各々がLINEグループで代案を出し合うが、Kさん以外は気乗りしない雰囲気がある。少なくとも僕にはそう感じたし、そんな流れを願わないわけではなかった。Kさんは「人生に対する負荷だ!」と、感情と行動を分離して義務的に動くことができる。でも僕はやっぱり祝子川に行きたかった。後で判明したことだがキャノン氏も自分の感情と戦っていたらしい。しかし、甲川に変わったことで沈みかけていたモチベーションが立ち上がる。「大山と沢」というイメージが僕を強く惹きつける。なるほど、いいイメージをもてることでこんなにも心の在り様が変わるのか、とその浅さ軽さから生まれる力強さを感じる。

そして僕らは甲川に行くことになる。梅本さんは行けなくなる。この二日間は晴れることになる。


8月4日 

大学付近、毎朝勉強に使うマクドナルドの隣にKさんの巨大な姿を見て、なんともいえない不思議さを感じる。ここにいるはずがない人がいる。普通に過ごしていたら関わるはずがなかった人が普通の世界に登場する。めぐり合わせの不思議さのようなものだろうか。キャノン氏がモンスターをお茶のように飲んでいる。友達に見られたい。大きな荷物を積んでこういう人たちと夜に集合する姿を。23:00出発


8月5日 晴れ 

キャノン氏がセクシーミレーをアームドし7:00時入渓。涼むには冷たすぎる。

高巻きのためトラバース。その先はスベスベの岩になり歩行不可能。下は澄んだ青の広いプール。飛び込むには高すぎる気がする、、、

Kさんに懸垂下降を要求するも、支点がないと即却下。次の瞬間には「行きまーす。」と真下に落ちていく。僕とキャノン氏が注意する間もなく、Kさんグランドフォール。あなたの下は浅かったのに、、、続いてキャノン氏、僕のザック、僕の順に青いプールに吸い込まれ、始まりを実感する。




泳ぎ


渡り


休憩する





このカエル、U本さん(らしい)。「ごめんね。君に似ている人がいるのだよ。」と愛情を含んだ皮肉っぽさで話しかけ、笑うKさん。

「おー!U本隊員じゃないか!!!」とキャノン氏

12:00 ビバーク適地到着

米を炊くことを期待していたらしく、サトウのご飯をもってきたと伝えるとため息が聞こえた。太陽の光が葉を貫き、目に沁みるような緑に囲まれる。澄んだ川の流れのそば、二人は横になり、雲一つない青空を見上げる。U本が来ないから天気が良くてどうたらこうたらと二人はケラケラ笑っていると思ったら、いつの間にか寝息をたてていた。


8月6日 7:00出発

帰りのルート選択を任せられ、僕は先頭きって藪漕ぎする。ウエットスーツの中で体が沸騰していくのを感じる。が、うまく尾根に乗れずに沢まで引き返す。体全身に冷たさがしみわたり、目の前の水をガブ飲みしてから再び出発。上流に向かうとケルンのようなものを発見し、トレースのついた藪の中を確信に満ちた足取りで進む。ウエットスーツのせいで汗が止まらない。辛くなってくる。二人は止まらない。表情に変化もない。一人だけ疲れるというのはやはりいい気持ちはしない。お願いだから、きついの一言くらい言ってほしい。物理的な距離は離れなくても精神的においていかれている気がする。物理的にもおいていかれている気がする。ウエットスーツさえなければ、と散々お世話になっておいて邪魔な存在としか感じられなくなる。そんなことを考えていると、ようやく歩道に出る。険しい大山北壁と日本海が見える。

半袖半ズボンに登山靴の姿になり、水分と食料をとると生まれ変わった気分になる。快適な歩道を歩いていると「わかっているよね?」と二人はニヤニヤしている。

「頼むよ、怒涛のデナリ。」


「怒涛のデナリ」(車の回収)

日本海に向かって青天の下、ひた走る。「早かったじゃないか!」の一言のために。

「お前らよく見とけ!」

すれ違う車に好機の目で見られることで僕の自己肯定感のボルテージは最高潮に。

「ああ、これが俺のリードの仕方なんだ。」と妙に納得する。あまりいい解釈ではないのかもしれないけれど、、、

でもとにかくその時の僕は満ち足りていたし、満ち足りたことで目の前に広がる日本海は僕を祝福しているように感じた。風景が変わるとはこのようなことをいうのだろう。 足は軽い。 僕は道路を走る。

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