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2018 9月ヨセミテ(前編)

エリア アメリカ合衆国 カリフォルニア州 ヨセミテ国立公園

メンバー シロクマ改、宮元、Y

いつのまにかズルズルと時が経ち一年が終わってしまいました。

今年は平成最後、新しい元号になります。

去年の9月に行ったヨセミテ、ノーズ敗退は悔しく整理がつかないままでしたが、昨年末の屏風で再び敗退…。しかしこの敗退である意味開き直りと言いますか、一度で登れなくたって、何度だって行けばいいさと改めて考えるようになりました。

ヨセミテから帰ってきて書きかけていたブログ記事を改めて書き足し投稿しようと思います。

〈2018年9月〉

クライマーの聖地、ヨセミテに行って参りました。

目標はEl Capitan「 The Nose」だ〜!とか言っていたのですが、あまりの熱波に3人とも熱中症になり敗退となりました。色々悔しい山行となりましたが、非常に勉強になることがとても多く良い合宿となりました。

まずはノーズ敗退まで…。

9月6日

日本を飛び立ち順調に進む。アメリカ初日はモーテルに泊まり近くのレストランでビールを飲み就寝。

9月7日

早朝モーテルを出発し、ヨセミテバレーへ。

途中のスーパーで買い出しも行った。

バレーに着くと皆、記念写真を撮ったり観光モード。

ミドルカシードラクロックの基部からノーズを観察し取り付き偵察も行う。

この日の宿はハーフドームヴィレッジに泊まる。

9月8日

朝早く起きノーズへ。

この日はDay0で、シックルレッジまでの4Pをフィックスする予定。

ここから灼熱地獄が始まる…。

1P目Yリード

快適に進む。しかし本来の終了点より手前のビレイポイントでピッチを切ってしまった。

この頃はまだまだ余裕である。

2P目宮元リード

本来の1P目の終盤部分に当たる。日差しがきついがまだ皆生きている。しかしこのころからこの乾燥と日差しが尋常でないと薄々感じ始める。

3P目宮元リード

本来の2P目に当たる。1P目にピッチを切り間違えていたことに気づかず、ここは5.7のフェイスのはずだ!とか言って、振り子トラバースのセクションを直上しようとしてしまった。結局登れず振り子トラバースに気付く。

そろそろ皆、熱中症の症状が出始める…。

4P目Yリード

宮元さんが脱水でダウン気味、リード交代し私が登ることに。グレード自体はC2だが1箇所フッキングは出てきたくらいで難しいところは無かった。良いペースで登りあがり4P目終了点でビレイ解除コール、ロープをフィックスした。

そこで突如スーピードアッセントをしているベネズエラ人パーティーがやって来る。ショートフィックスを駆使したスピードアッセント行う人を生で観れたのは勉強になった。トップはマイクロサイズのカムを5~6個しか持っていない。ハンドサイズ以上では落ちないのだ!

彼らを先に先行させるためしばらく待機、この待機時間にも体から水分が奪われていく。

ここで完全に熱中症になった…。

呼吸するたびに喉から水分が放出されていく。そのくらい乾き切っている。日本は湿気があるから乾燥している地域より暑い、これは嘘だ!この乾きは日本人には適応が困難である。

意識レベルが低下し思考や行動が出来なくなる。ホールバックを引き上げて水を飲みたいがその力が出ない。セカンド、サードが水を持っているはず。とりあえず極力消耗しないよう動かず水を待つ。

シロクマさんが先に上がって来た。即座に水を奪い取り一気に飲み干してしまった。

シロクマさんがおいおい俺の水…。って顔をしている。それでも水分が足りない…。

宮元さんも上がって来てさらにスポーツドリンクを飲む。

若干思考能力が戻るが未だ視界はフワフワしたままだ。

皆ぐったりとしている。誰も機敏にロープを操作することが出来ない。

ホールバックの中には大量の水があるのだ、この重りをあげるために喘ぎ苦しみ脱水症状になっている。

シロクマさんが水を飲もうと言う。もちろん手持ちの水はもうない、あるのは我々を苦しめている翌日以降の46kgの水だ。

検討の余地もなく躊躇なくホールバックの水を開けた。皆で1ガロンの水をがぶ飲みする。

この時私は、ああノーズは終わったなと考えていた。

水分を取ると目に見えて視界が広がり、思考能力が回復した。

皆同じだったようだ。

5P目Yリード

シックルレッジに到着。セカンドを待つのも時間がもっといないので一人で荷揚げする。

全員がシックルレッジに到着。今日のままだとトップアウト分の日数の水が足りない、これ以上水を増やしたら重すぎて荷が上がらない。ここまでにしましょうと切り出した。

見上げるとドルトタワーがそびえ立ち、そのずっと先にあるのにも関わらず手が届きそうに見えるヘッドウォールが我々を見下ろしている。

ノーズのアタックが終わった。

日が暮れる中フィックスを張って降りた。

9月9日

前日張ったフィックスを登り返す。

シックルレッジでは奥さん連れの強いお兄さんが登ってきてシックルレッジから降りて行った。聞くに初めてノーズに登ったのは17歳、最短7時間でノーズを登ったことがあるとのこと。世界には強い奴が沢山いる。我々がヒイコラ言っているこの壁は現在の最短で3時間を切って登られているんだ。

シックルレッジで水を捨て荷を軽くし撤収する。苦労して揚げた水を放水してる時、ああもう登れないんだと呆然とする。

捨てた水が霧になり荷が軽くなるにつれ敗退が現実となったと次第に認識していく。

目の前の美しいラインを見ながら、決して登れない壁では無いんだ、と唇を噛み締めリベンジを固く心に誓った。

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