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甲斐駒ヶ岳黄連谷~八ヶ岳アイスクライミング

期間 令和2年12月28日から令和3年1月3日までの間

山域 南アルプス連峰甲斐駒ヶ岳→八ヶ岳の氷瀑

参加者 Y、T、kinoshita


12/28 離福→山梨

 泊り勤務をこなし、気配を消し煙のように職場を後にする。迎えの車に荷物を積み込み、目指すは甲斐駒ヶ岳黄連谷左俣からの赤石沢奥壁中央陵継続。ここ数年冬山は敗退が続いており、今年こそは何とか形あるものにしたい。しかしメンバーの一人が都合により離脱、更には悪天が近づきつつあるという。車中でうつらうつらしていると、遠くでかすかに声がする「天気が崩れる前に、下から一気にアタックしましょう…」おいおい、どうか夢であってくれと思ったところでハッと目が覚め、それが夢でも何でもないことが判明する。

12/29 02:00駒ヶ根神社発→黒戸尾根→06:10五合目小屋後→08:45黄連谷→17:20稜線直下Vi

 それから車中で装備をアタック仕様に変更し、不足の装備品を購入(なんとザイルを忘れた)しながらと慌ただしく北上し、結局一睡もできないまま出発時間となる。ただでさえしんどい黒戸尾根を、夜勤明けの重たい身体に鞭打って登り、五合目の小屋跡からはせっかく稼いだ高度を2時間以上かけて捨て黄連谷へ下る。雪は地面を少々覆う程度で気温は-5℃くらいか。坊主の滝は氷結が甘く、たまらずザイルを出す。車中でバイルを研ごうと思っていたがそんな暇はなく、早々に岩を叩いてしまい上手く決まらない。簡単なナメ滝を数箇所越え、いよいよ二俣を左へ。4年前、負傷者を出し敗退したチムニー滝を越え、続いて50mのナメ滝を登る。さらにザイルを出すか迷う程度の滝が出てきたので左の尾根を登るといい感じに上に抜けることができ、さらに登ると遂に大滝を臨むところまで辿り着く。

 ここまでおよそ11時間。やっとの思いで拝んだ大滝は下部に大きな穴が開いており、離れたこの場所まで水が流れ落ちる音が聞こえる。それでもと子細に観察するが上部の緩傾斜帯も氷が薄く、この重荷で取り付いたら崩落しそうである。

一気に力が抜け更に重たくなった足を励ましてそのまま左の尾根を這い上がる。GPSでは左手200mに黒戸尾根の登山道があるようでそちらに復旧しようともがくが、もともと傾斜が強いうえに所々露岩帯が出てきて中々に手強い。先頭は時々吠えながら登ってゆく。次第に薄暗くなってきた。もうこれ以上の行動は危ない。若干傾斜がマイルドになってきたところで露岩の間に3人ならば何とか座れるスペースを見つけ、手早く整地しロープを張り巡らせてツエルトを張りビバーク体制に入る。今日は15時間行動だった。疲れた身体に生姜湯が沁みる。





12/30

 風も穏やかでそう寒くもなく、時おりツエルトの隙間から差し込む月明りを楽しんでいたが、午前3時ころから雪が降り始め、明け方には結構積もりだす。5時ころにシュラフから這い出し、朝食のラーメンをすすり、明るくなるのを待ち、一気に装備を詰め込み稜線へ向け這い上がる。GPSでは稜線まで21mと出ていたが、およそ15分で稜線の脇に建てられた祠を見つけ、殆ど雪に埋もれた登山道に復旧。雪は深々と降っており、中央陵へ継続なんて頭の片隅にもなく、さっさと下山する。5号目あたりで雪は雨に変わり、体も装備もすべて濡れそぼり、寒さに震えながら12時ころ駐車場に下山する。この日は道の駅で車中泊。快適なハイエースの荷台で3日ぶりの睡眠をむさぼる。

12/31 八ヶ岳南沢大滝

 情報をかき集めた結果、八ヶ岳ならば間違いないということになり、まずはコインランドリーで装備を乾かし、美野戸口へ。一転して多くの人で賑わい、華やかな感じだ。なんの心配もない登山道をぽくぽくと歩き、3時間くらいで南沢大滝着。自分がリードし2人をフォローで上げたところでいい時間だったので撤収し、日没後まもなく登山口へ戻る。小屋のご主人の厚意に甘え、薪ストーブに当たりながら夕食を取らせてもらう。揺らぐ炎と獺祭の馥郁たる香り、豚の角煮とリゾット、もう完全に降参である。幸福感に浸っていると小屋の主が「縁起物だから」とそばをご馳走してくれる。そういえば今夜は大晦日、新たな年に幸あれ。

1/1 広河原左俣

 年が明けた。天気はあまり良くないが、1名レストということなので、いつもの2人でクリスマスルンゼを目指すが、完全な二日酔いで少し歩くと息が荒れる。漫然とトレースをたどっていると、現在位置が怪しくなってくる。3時間ほどで15mくらいのきれいな蒼色の氷瀑が出てきて、いよいよ判らなくなり、恥を忍んで後続パーティーに尋ねると、不思議そうな顔で「左俣大滝ですけど?」との答え。いかん、右と左を完全に間違えた。とりあえず大滝を登って、先に進むか迷うが、天気も悪いし稜線まで抜けるのも気が進まなかったので、同ルートを下降。




1/2 クリスマスルンゼ

 今日も広河原沢を詰める。今度こそはと慎重にルートを見極め、分岐を右に進む。そこから90分ほどでクリスマスルンゼ着。名前の由来は知らないが、明るく華やかな雰囲気の氷瀑である。2ピッチに分けリードを交代しながら登るが、ビレイ中は寒くてやってられない。全員が登り切ったところで同ルート下降。当初はポストクリスマスルンゼも考えていたが、全員もういいやと下山、長い帰路に就く。



1/3

 帰路も、ちょっとしたトラブルに見舞われたりと最後まで珍道中だったが、久方ぶりの充実した冬山だった。

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